一般社団法人日本造血・免疫細胞療法学会 Japanese Society for Transplantation and Cellular Therapy

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11-1. 慢性移植片対宿主病

最終更新日:2020年12月18日

移植片対宿主病(以下、GVHD)は、ドナー由来の細胞が患者さんの体を他人と認識して起こす免疫反応で、同種造血細胞移植を受けた患者さんに発症する合併症です。慢性GVHDは多くの場合は、移植後3か月頃から2年までに発症しますが、3か月以内や2年以降に発症することもあります。発症頻度は、末梢血幹細胞移植を受けられた方の60%程度、骨髄移植を受けられた方の40%程度で発症するとされます。

慢性GVHDの発症は移植後残存するがん細胞に対する免疫効果を発揮すると考えられている移植片対腫瘍 (以下、GVT)効果と深く関わっているため、病状によってはメリットになることがあります。一方、慢性GVHDが重症化すると、感染症を併発したり、生活の質(QOL)の低下を招くことがあります。起こりやすい場所は皮膚、口腔、眼、肝臓です。皮膚に起きた場合は、湿疹が出たり、皮膚が硬くなったりします。皮膚の色が黒くなったり、逆に色が抜けて白くなったり、脱毛が見られることがあります。口腔に起きた場合は、白い網目のような変化が口の粘膜に見られたり、食事や歯磨きをすると痛みが出たりします。目に起きた場合は、充血や目の痛み、涙が出にくくなり、目の表面が乾燥してドライアイをおこします。食道に起きると、飲み込むのが困難になることがあります。肝臓の場合は、症状が無いことが多いですが、血液検査で肝機能値(AST, ALT, ALPなど)の上昇がみられます。筋膜が硬くなり、関節の曲げ伸ばしが困難になることがあります。肺に起きた場合は、閉塞性細気管支炎と呼ばれ、喘息のような喘鳴(ぜんめい)音が聞こえたり、運動時に息苦しさを感じたりします。その他の臓器にも、症状が出現することがありますので、異常に気付かれた場合は、医師に相談してください。

慢性GVHDの治療はGVHDの重症度と患者さんの病気の再発リスクや感染症などの合併症を総合的に評価して行います。一般的には、慢性GVHDが軽症の場合は外用薬などの局所療法を行います。中等症または重症の場合や、局所療法のみで改善に乏しい場合は、ステロイド内服を中心とする全身治療を行います。ステロイドで改善が見られた場合は、GVHDが再燃しないようにゆっくり減量を行い、6か月~1年程度はステロイドを継続することが多いです。全身治療が必要になると、ステロイド以外も含めた全ての免疫抑制剤を終了出来るまでには2-3年を要することも珍しくはなく、患者さんによっては少量の免疫抑制剤を10年以上継続する場合もあります。ステロイドで効果が不十分な場合には、他の免疫抑制剤をさらに追加することがあります。詳しくは医師に相談してください。

慢性GVHDの治療を受けられる場合は副作用の対策が重要です。例えば、糖尿病になっていないか定期的に確認する必要があります。また、骨密度が低下することが多いため、骨密度の確認が必要です。感染症を予防するために、ST合剤という抗菌薬や、アシクロビルという抗ウイルス薬の内服を行うことが多いです。また、満月様顔貌(ムーンフェイス)、中心性肥満、白内障、ステロイド挫創(にきび)、皮膚が薄くなる、高血圧などの副作用もよく見られます。

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