「8.移植の実際-移植後早期の合併症-」に挙げたような合併症が軽快し、感染症状がなく、免疫抑制剤の内服量が安定したら退院となります。しかし、免疫力が健常の人と同じくらいまでに回復するのに、1~2年程度はかかると考えられており、自宅でも引き続き感染予防が必要です。また、主として造血幹細胞から新たに成長したリンパ球によって、移植後おおよそ100日を超えてから慢性GVHDの症状が出てくることがあります。慢性GVHDの症状は急性GVHDと異なり多岐にわたり、皮疹、肝障害、角膜炎、口内炎、筋炎、関節症状、細気管支炎など自己免疫疾患に似た様々な症状が出現する可能性があります。特に急性GVHDを経験した患者さんや末梢血幹細胞移植を受けた患者さんに発症リスクが高いことが知られています。慢性GVHDに対する治療は、症状が1~2臓器だけに限局し、かつ、重症でなければ、原則として外用薬などの局所療法を選択します。しかし症状が3臓器以上に及ぶ場合、または1臓器のみであっても症状が強い場合は免疫抑制剤やステロイドの内服などを必要とします。全身的な治療を要した場合は免疫力の回復がさらに遅れることになり、感染予防の継続が重要になってきます。