骨髄ドナーには全身麻酔や頻回な穿刺に関連する合併症が、末梢血幹細胞ドナーにはG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)製剤の注射や成分分離装置による血液の体外循環に伴う合併症が、それぞれ発生する可能性があります。ただし、骨髄採取と末梢血幹細胞採取では重い合併症の発症頻度には差はないことが示されています。二つの採取方法の違いを理解したうえで、どちらかを選択するかお考えください。
骨髄採取 | 末梢血幹細胞採取 | |
全身麻酔 | 必要 | 不要 |
自己血採血 | 必要(不要の場合もある) | 不要 |
G-CSF製剤注射 | 不要 | 必要 |
成分分離装置による血液の体外循環 | 不要 | 必要 |
入院 | 通常3泊4日 | ・G-CSF製剤注射初日から入院の 場合:4泊5日~6泊7日 ・G-CSF製剤注射を外来で行う 場合:1泊2日~3泊4日 |
病院への来院回数 | 7回前後 | ・G-CSF製剤注射初日から入院の 場合:5回前後 ・G-CSF製剤注射を外来で行う 場合:8回前後 |
移植する方法は、いずれも点滴で輸注するので、投与に要する時間以外には大きな違いはありません(輸注骨髄液量は体重によりますが600~1,000cc、末梢血幹細胞の場合は200cc未満です)。しかし、末梢血幹細胞移植は造血幹細胞とともにドナーのリンパ球が多く移植されるため、骨髄移植よりも移植片対宿主病(GVHD)が増加することがわかっています。しかしその一方で、患者さんの体内に残っているがん細胞を攻撃して消滅させてくれる移植片対白血病効果(GVL)効果も高くなり、再発率が低下することが期待されています(ただしこれには明確な結論が出ていません)。また、末梢血幹細胞移植の方が、骨髄移植よりも若干好中球の生着が早いとされています。
実際には慢性GVHDを避け、GVL効果をあまり必要としない再生不良性貧血や小児患者さんには骨髄移植が選択されやすい傾向があります。他方、GVL効果を期待する非寛解期や再発リスクの高い白血病や、感染症があるために少しでも早く好中球の生着を得たい患者さんには末梢血幹細胞移植が選択される傾向があります。