一般社団法人日本造血・免疫細胞療法学会 Japanese Society for Transplantation and Cellular Therapy

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8-3. 移植片対白血病・リンパ腫効果

最終更新日:2018年3月14日

移植片対白血病・リンパ腫効果とは

移植されたドナー由来のリンパ球が患者さんの体を異物とみなし、これを攻撃する免疫反応は移植片対宿主病(GVHD)として知られていますが、移植後に患者さんの体内に残存している白血病細胞もドナー由来のリンパ球にとっては患者由来の異物であることから、これを免疫反応で攻撃する働きがあることが知られており、これを移植片対白血病(GVL)効果と呼んでいます。GVLとは同種造血細胞移植後にドナー由来のリンパ球が増加し、免疫反応によって患者さんの体内に残っている白血病細胞を攻撃し続け、排除することで再発を抑えこみ、最終的に完治に至るものと考えられています。

GVL効果は白血病以外の悪性リンパ腫や骨髄腫などの血液悪性疾患と各種固形腫瘍についても引き起こされることから移植片対腫瘍(GVT)効果とも呼ばれています。つまり、GVHDとGVTは表裏一体の関係にあるため、免疫抑制療法によって過度にGVHDを押さえ込み過ぎると、結果として治癒を得るために重要な免疫療法的効果であるGVL効果を打ち消してしまう可能性があります。そこで軽度のGVHDについてはGVL効果の発現を期待して、免疫抑制療法の強化を行わずに慎重に経過観察する場合があります。また移植早期に再発をきたした場合にはGVL効果を引き出すために免疫抑制剤の早く減量や中止したり、ドナーリンパ球輸注(DLI)が行われます。また移植前処置を軽減した骨髄非破壊的移植(ミニ移植)はGVL効果を治療効果として期待した移植法です。

DLI治療とは

DLIは移植で造血幹細胞を提供したドナーから成分採血もしくは全血採血によってリンパ球を採取し、これを移植後の患者さんに投与することでGVL効果を引き起こし再発を抑え込む治療法です。その他、ウイルスによって引き起こされるリンパ増殖性疾患や各種ウイルス感染症についても効果があることが知られています。

ドナーリンパ球輸注(Donor Lymphocyte Infusion: DLI) について

骨髄非破壊的移植(ミニ移植)とは

高齢者や臓器障害を有する患者さんに行われる骨髄非破壊的移植(ミニ移植)はこのGVL効果で白血病治療を行おうとする治療法です。以前は強力な抗がん剤や放射線療法による前処置によってがん細胞を消失させることが移植の成功に必須と考えられていました。しかし、そのために治療関連毒性が強くなることから、移植の対象となる患者さんは若年かつ臓器障害のない方に限られていました。しかし、現在では移植後に起こるGVL効果が完治を得るために大きな役割を果たしていることが明らかとなったことから、移植前処置を弱めた骨髄非破壊的移植が普及し、以前には治療関連毒性のために移植に耐えられないとされていた多くの患者さんに移植が行われるようになっています。さらに再発リスクの高い患者さんや、治療抵抗性で移植時にがん細胞が残存している非寛解の患者さんに対して、GVL効果を最大限に引き出すためにわざと患者さんのHLAが完全には一致していないドナーやさい帯血を選択したHLA不適合移植やHLA半合致移植が行われています。しかし、その場合には重症GVHDが発症する可能性も高くなるため、その適応については慎重に考慮する必要があります。

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