一般社団法人日本造血・免疫細胞療法学会 Japanese Society for Transplantation and Cellular Therapy

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11-10. 二次発がん

最終更新日:2018年5月10日

造血細胞移植後の二次がんは大きく分けて3つあります。1つ目は、移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)と呼ばれ、移植後1年以内に発症することが多い傾向にあります。2つ目は、治療関連の骨髄異形成症候群または急性骨髄性白血病と呼ばれ、移植後2-3年までに発症することが多いです。3つ目は二次固形がんと呼ばれ、移植後4-5年を過ぎた頃から発症することが多いです。

PTLDの発症率は1%とまれですが、移植後の免疫不全状態が原因となり、Epstein-Barr (EB)ウイルスというウイルスが活性化することで発がんに至ります。PTLDの治療は、EBウイルスがB細胞に感染している場合は、リツキシマブが有効な場合が多いです。EBウイルスがT細胞に感染している場合は、免疫力を回復させるために免疫抑制剤を減量または中止したり、ドナーリンパ球輸注、EBV特異的T細胞の輸注する方法などがあります。

治療関連の骨髄異形成症候群または急性骨髄性白血病の多くは自家移植後に発症し、発症率は5%程度とされています。リスク因子としては、アルキル化剤の投与歴、長期間の化学療法、移植前の放射線照射などが知られています。移植後の血液検査で白血球の減少や増加、貧血の進行、血小板数の低下、芽球(がきゅう、幼弱な造血細胞)の出現があった場合には、骨髄検査を行い診断します。診断がついた場合には、通常の骨髄異形成症候群または急性骨髄性白血病と同様の治療が必要になりますが、化学療法が効きにくい傾向にあります。

二次固形がんとは、造血細胞移植を受けられた患者さんの口腔、皮膚、食道、胃、大腸、肺など、様々な部位に起こるがんのことです。二次固形がんの発症頻度は、自家移植後で2%程度、同種移植後で5-10%程度と報告され、時間の経過とともに増加して発症すると言われています。一般の集団と比較した場合に、同種移植を受けた患者さんでの発症リスクは、2-3倍高いことが知られています。日本人で発症頻度が高いのは、口腔がん、食道がん、大腸がん、肺がん、胃がん、皮膚がんです。二次固形がんのリスク因子には、放射線照射歴、免疫抑制剤投与量と期間、慢性GVHDが知られています。二次固形がんは早期発見が大切であり、一般のがん検診を必ず受けることが大切です。口腔に慢性GVHDのある患者さんや、ファンコニ貧血の患者さんでは、発がんのリスクが高いため、半年に1度くらいは口腔の診察を受けることが推奨されます。また、慢性GVHDのある患者さんでは定期的に上部消化管内視鏡検査をお勧めします。一般的な乳がん検診は40歳以上で毎年受けることが推奨されていますが、胸部に放射線治療を受けたことのある患者さんでは、40歳未満でも放射線治療の8年後から検診を始めた方が良いとされています。なかなか改善しない口や皮膚の傷や、色の変化に気づいた場合は、医師に相談して下さい。

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