CAR-T細胞療法を行う場合には、患者さんのリンパ球を採取するためにタイミングを図る必要があり、また、CAR-T細胞が作成されるまでの期間の病状をコントロールする必要があります。多くの場合、その期間を無治療で待つことは難しいために、ブリッジング療法という橋渡し的な化学療法が行われます。病気の勢いが強く、採取までのタイミングまで待てないような患者さん、またブリッジング療法にも効果がなく、急激な病気の進行を認める患者さん、また残念ながら、CAR-T細胞が製造失敗となった患者さんなどはCAR-T細胞療法を行うことが難しくなります。そのような患者さんには今までの治療がどの程度効いたのか、以前に使用してからどの程度の期間が空いているか、患者さんの全身状態や臓器機能の状況などを見極めながら治療で用いる薬剤を選択します。
最近では二重特異性抗体が登場し、CAR-T細胞療法と並んで、TCEの患者さんに対して、その有効性が報告されています。エルラナタマブが本邦ではTCEの患者さんに保険承認されています。代表的な臨床試験において、エルラナタマブの治療成績は全生存の中央期間は24.6ヶ月であり、既存治療のそれよりも良好であることが報告されています15)。そのほか、TCEの場合は新規薬剤だけでなく、殺細胞性の抗腫瘍薬を積極的に併用することが多くなります。さらに年齢や臓器機能、その後の治療の奏効によって、造血細胞移植が行われる場合や、臨床試験なども考慮されます。