同種造血幹細胞移植の実施には、患者さんに対する造血幹細胞の提供者が必要であり、そのような提供者のことを「ドナー」と呼びます。実際に移植される細胞には、造血幹細胞そのものではなく、造血幹細胞を豊富に含む細胞液として、骨髄(注1)・末梢血幹細胞(注2)・さい帯血(注3)の3種類が用いられており、それぞれにこれらの細胞を提供するドナーが存在していることとなります。いずれの場合も、造血幹細胞の提供は、その提供者(さい帯血の場合には母親)の善意に基づく自発的な行動であり、ドナーの自由意思と安全性を確保し、不利益を最小限にすることは造血幹細胞移植という医療が成立するための何より重要な基盤と言えます。
同種移植に用いる骨髄と末梢血幹細胞の提供を行うことができるのは、患者の血縁者と日本骨髄バンクへのドナー登録者に限られており、さい帯血の提供は臍帯血供給事業者として登録されている全国6ヶ所の公的さい帯血バンクのみが可能です。これらを合わせ、日本で行われている年間約3,600件の同種造血幹細胞移植のドナーは、患者の血縁者が約3分の1、日本骨髄バンクの非血縁者が約3分の1となっており、残り約3分の1の移植がさい帯血を用いて行われています。2017年12月末現在、日本骨髄バンクへのドナー登録者数は48万人を超えており、さい帯血バンクには約10,000本の移植可能なさい帯血が保管されています。このように造血幹細胞移植はドナーや造血幹細胞バンクという社会資源によって強く支えられています。
注2)顆粒球コロニー刺激因子などの薬剤によって造血幹細胞が豊富に含まれるようになった後に集めた血管の中を流れる血液。