一般社団法人日本造血・免疫細胞療法学会 Japanese Society for Transplantation and Cellular Therapy

CAR-T細胞療法について

患者さん・ドナーさん・一般の方へ
第46回日本造血・免疫細胞療法学会総会
各種申込・申請受付情報
入会案内

学会が主導または支援する臨床研究

申請について 研究一覧

4-6. CAR-T細胞療法後の合併症

最終更新日:2023年7月6日

(1)サイトカイン放出症候群

(CRS) 活性化したT細胞により起こる合併症で、投与されたCAR-T細胞が急速に増殖することや骨髄腫細胞が死滅することで起こる免疫反応などで発症すると言われています。症状としては発熱、血圧低下、呼吸状態の悪化など様々で、程度に応じて解熱剤、トシリズマブ(アクテムラ®)、ステロイド製剤などの投与が必要となります。CAR-T細胞投与後、ほとんどの場合では1週間以内に起こることとされていますが、投与後2週間程度で発症することもあります。イデカブタゲンビクルユーセル(アベクマ®)というCAR-T細胞製剤を使用した場合には84%の患者さんで発症し、5%の患者さんで重症化したことが報告されています11)。シルタカブタジンオートルーセル(カービクティ®)というCAR-T細胞製剤を使用した場合には95%の患者さんで発症し、4%の患者さんで重症化したことが報告されています12)。多くの場合、1週間程度の症状が持続し、上記の対症療法で改善することが知られています。

(2)免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群 (ICANS)

はっきりとした原因は明らかではありませんが、投与したCAR-T細胞に関連する神経障害が出ることが知られていてICANSと呼ばれています。症状としては意識障害、見当識障害(自分がどこにいるか、いつなのかわからないなどの症状)、痙攣などが知られています。CRSと同時期に発症することが多いですが、一部製剤では1ヶ月程度してからの遅発性の発症も起こることが報告されています。アベクマ®、カービクティ®ともに約20%程度の患者さんで発症し11,12)、ステロイド製剤や抗痙攣薬などの対症療法が治療となります。

(3)血球減少と血球減少に伴う合併症

リンパ球除去療法は化学療法ですので、化学療法による合併症も起こります。骨髄機能が障害されることによって、血球減少(骨髄抑制)が起こります。そのために白血球減少による感染症、赤血球減少による貧血、血小板減少に伴う出血などが生じることがあります。それぞれ抗菌剤投与や輸血など適切な方法で対応します。(補足: この時期に起こる好中球減少に対するG-CSF製剤投与はCRSの発症リスクを上昇させる可能性もあり、敢えて投与を避けることもあります。) またリンパ球除去療法後の骨髄抑制からの回復後に二次性に血球低下が生じることが知られており、その程度、回復までの期間は個人差が大きく、時に頻回の輸血を必要とすることもあります。

(4)低ガンマグロブリン血症

CAR-T細胞投与後には低ガンマグロブリン血症が遷延することがあります。必要に応じてガンマグロブリン製剤の補充を行うこともあります。

引用文献
11)Munshi, N, et al. N Eng J Med 2021;384(8): 705–716.
12)Usmani, S, et al. Abstract #8005 2021 ASCO Annual Meeting.

Copyright © JSTCT All Rights Reserved.
このページの先頭へ