移植を終えた子どもさんは、病気を克服しその後の長い人生を歩むことになります。子どもの成長発達を保障するために、病院の中で治療を受けている間は、特別支援学校、特別支援学級、訪問教育などの連携で学校教育を継続して受けます。退院後は前籍校あるいは特別支援校などで学び続けることになります。
下記のような資料もご参照ください。
復学のタイミング
移植経過の中で、退院後の生活を視野に入れた関わりをし、特に外泊などが可能になった時期に検討し始めます。復学の判断は、免疫抑制剤・ステロイドの量と慢性GVHDの程度・症状の安定、本人の意思、地域校の受け入れ状況などによります。院内支援校の教諭や病棟の看護師は移植を受けた子どもさんと学校や家族について確認していきます。
【タイミングを逃さない復学支援のために】
- 学校側も後から教員枠を調整するのは困難です。早い時期に復学の時期を学校側にも伝え準備を進めることをお勧めします。
- 復学する時だけではなく、治療中や入院中も入院時の原籍校とのつながりを持つことは、復学となった際に、復学をスムーズにするだけではなく、子どもさんの学校での孤独感を減らすことにつながると言われています。治療が終わり戻るときが来るのでその場所を作っておけるように、学校との関係性を保ちましょう。子どもさんにとって、学校に戻れることは自尊心を高めることに繋がります。
退院後の復学の準備
1)復学する学校を子どもさんと親の希望などを踏まえて、医療者や学校関係者と相談します。
*前籍校、特別支援校など
2)必要時は、復学準備のカンファレンスを行うこともあります。
カンファレンスでは下記の項目について話し合います。
a) 登下校:時間・通学方法・荷物の負担・坂道などの負担
b) 教室配置:HR教室・特別教室・保健室
c) 校内の移動:階段・エレベーターや段差の有無・補助の有無
d) 排泄:洋式・手すり・排便・介助・見守り
e) 清掃時間:ほうき担当 黒板消し 休憩 過ごし方
f) 食事制限・配膳 下膳
g) 服薬・学校でのケア(時間・保管場所・医療的ケア)
h) 着替え
i) 休養場所・時間
j) 教科(実験・観察・体育の参加や制限・クラブ活動)
k) 学校行事
l) 病気についての配慮事項
m) 児童生徒への説明の仕方
n) 感染症流行時の対応
o) 緊急時の症状・対応・連絡先
p) 通院の日程・外来の主治医
*上記およびご家庭での復学に対するサポート体制(送り迎えなど)、子どもさんの体力の回復状況や服薬状況などを踏まえて復学の予定を立てます。
3)学校の先生から学校の子どもさんたちへどのように説明をしてもらうかを考えます。
親の希望と子どもさんの希望が異なることがありますので、それぞれに確認するようにします。
低学年の子どもさんでも、どんなことを周りに気を付けてもらいたいか、何をお手伝い してほしいかを確認すると答えてくれることがあります。先生に「病気を治すのにとても頑張っていたこと」を伝えてもらうことも良いようです。
【ポイント】
- 子どもさんや親それぞれの考えを大切にすること。
- 病名を言うのか?言わないのか?(がんということをいうのか?)
- 病名をどのような表現で説明するのか?
- 現状の説明をどのようにするのか?
*「大きな病気をしたので、薬で治療していました。その薬の影響で、髪の毛が抜けたり、風邪をひきやすくなったりしています。そのため、帽子をかぶったり、マスクをしたりします。」などの説明の範囲
- きょうだいに対する配慮をどのようにするのか?
【具体例】子どもが登校する前にクラスメイトに説明した例
私は、長い間入院していました。病気はすっかり治りました。久しぶりにみんなと一緒に学校に通えるのでとても嬉しいです。でも少し不安もあります。そこで、みんなに理解してもらいたいことや助けてほしいことをお話しします。まずは、私は今はみんなほど体力はなく、1日授業を受けると疲れます。だから、ちょっとずつ授業を受ける時間を増やして、体を慣らしていこうと思っています。病院に通う日は休むことも早退することもあります。体育はしばらく見学します。それから、給食当番の時は重い物を持てないので助けてね。治療で帽子を被りなさいとお医者さんから言われているので、教室の中でもかぶっています。だから、触ったり、ふざけて帽子を取ったりしないでください。それから、悪気はなくてもぶつかったり、押したりしないでください。みんな優しく仲良くしてくれたら嬉しいです。私も頑張ります。どうぞよろしくお願いします。
復学のための親としての心得
- 少しずつ在学時間を延長すること
- 焦らず子供の体力や気持ちの回復を見守りながら進めていくこと
- 学校の先生と子どもの状況の情報共有をまめにすること
復学に前向きになれない子どもさんへの支援
思春期・青年期世代は難しく、複雑な心の揺れがある子どもさんと向き合う辛さがあります。特に下記のようなことがあると子どもさんは復学に向けて前向きにはなれないこともあります。復学に向けて年単位で時間がかかることがあります。焦らずセルフケアの自信を一つ一つ獲得できるように段階的に、支援していくことが必要です。大切なのは、「できる自分」を積み重ねていける支援を続け、時には背中を押すことです。
- 外観が気になるケース(ニキビ出ている、身長が伸びない、髪の毛が抜けている)
- 病気の事を知っている友達がいない
- 腸GVHDが強くトイレに行く頻度が多い
- 担任の先生や友達の理解が得られない
- 自分の思いが伝えられない
- 自分の病気について自分自身がよく理解できていない
- ワクチン接種はガイドラインを参考に個々にあったタイミングを決定します。
- 認知機能の評価として、毎年MMSE(Mini Mental State Examination)、HDS-R(長谷川式スケール)を用いて評価することがあります。
- 発達段階に応じた心理的サポートをします。