造血細胞移植が受けた患者さんは、慢性GVHDや免疫不全、体力などの問題により退院後すぐに社会復帰できないこともあります。退院後も利用できる支援や制度についていくつか紹介させていただきます。
※基準等については2017年12月現在のものです。
血液の病気と診断を受けた初診日から1年半を経過したとき(障害認定日)に、障害の程度が障害等級に該当した際に支給されます。患者さんは、移植後もGVHDや再発等により障害が残ってしまったり仕事に復帰できないこともあります。傷病手当金は1年半の間しか支給されないため、支給停止後の経済的支援の一つとして障害年金受給の可能性がないか相談窓口に相談することをおすすめします。
なお、2017年12月1日より、『血液・造血器疾患による障害』の認定基準が一部改正されました。具体的には、これまで個々の臓器障害として申請していた慢性GVHDによる障害を、「慢性GVHD」として申請することが可能となりました。
血液・造血器疾患による障害年金の認定基準については日本年金機構のホームページをご参照ください。
GVHD等により身体に一定以上の障害が残ってしまったとき、身体障害者手帳の交付を受けると医療費や医療装具の助成といった各種サービスが受けられます。障害の種類としては、視覚障害、聴覚・平衡機能の障害、音声・言語・そしゃく機能の障害、肢体不自由、内臓の機能障害(心臓、腎臓、呼吸器、膀胱または直腸、小腸、免疫機能障害)があります。
※厚生労働省ホームページ「身体障害者手帳」
身体に障害がある18歳未満の児童{肢体不自由、視覚・聴覚障害、内臓障害(心臓・腎臓・肝臓・呼吸器等)}や身体障害者手帳をもっている方が対象で、日常生活能力の回復向上を図るため(育成医療)、または18歳以上の身体障害者の日常生活を容易にし、職業能力を増進するため(更生医療)、それぞれその障害を除去または軽減することを目的として、その治療に要する医療に対して給付があります。
医療費控除というのは、支払った医療費が一定額を超えるときに、かかった医療費から10万円(所得が200万円以下の場合、所得の5%)を差し引いた残りの1割が税金から還元される制度です。この10万円以上という金額は、生計を一緒にする家族全員の医療費を合わせたものです。医療費控除は、病院代だけではなく、骨髄バンクに支払った費用、薬局で買った薬代なども控除の対象になります。
治療のためにやむを得ず勤務先を退職され、すぐに就職が出来ない場合は雇用保険の失業給付をすぐに受けることができません。病気のためにすぐに就職できない場合は、退職後30日間労務不能を確認し、その翌日以降、延長後の受給期間の最後の日までの間でハローワークに申請することにより、受給開始期間を最長で4年間延長することができます。退院後、医師から再就職活動可能と許可が出た場合、失業給付受給延長解除の手続きが必要となります。
全国には血液疾患やがんの患者さんや家族のための患者会や支援活動を行っている組織がたくさんあります。病院の中に患者会がある場合もあります。退院後の生活について、経験者の意見を聞いたり、相談することも大変有用です。どのような患者会があるか、病院のがん相談支援センターの相談員や看護師さん、造血細胞移植コーディネーターに相談してみてはいかがでしょうか。