一般社団法人日本造血・免疫細胞療法学会 Japanese Society for Transplantation and Cellular Therapy

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5-2. 神経毒性(ICANS)

最終更新日:2023年7月6日

CRSが遷延した症例に起こりやすい合併症として、「神経毒性」が知られ、具体的には、免疫細胞関連神経毒性症候群(ICANS)と呼ばれています。これは、CRSで産生されたサイトカインが中枢神経(脳)に作用することや、投与したCAR-T細胞を含めたリンパ球や単球が直接、脳の中に入り込み、血管を刺激することがその原因として考えられています。

ICANSはCAR-T細胞輸注後3~6日目に出現することが多く、初期症状の例として振戦(ふるえ)、書字障害(字が書けない)、表出性言語障害(うまくしゃべれない)などがあげられます。中等症以上では、傾眠(すぐ眠ってしまう)、認知機能低下、痙攣,せん妄(幻覚・幻視など)を起こすこともあります。脳の合併症ということで心配されるかもしれませんが、神経症状の殆どは一時的なもので、CAR-T細胞輸注後14~21日までには多くの患者さんで後遺症を残さずに症状の改善を認めています。治療は、副腎皮質ステロイドホルモンの投与と抗痙攣薬の予防投与を行います。

ただ、ICANSは患者さんご本人が症状に気づいて、医療者にお伝えいただくのが難しい合併症です。そのため、意識障害や振戦、言語障害を観察項目として看護師が経時的に観察し、典型症状の有無を逐一記録することで、注意すべき症状の出現を早期に捉えることが重要となります。医療者だけでなく、電話やメールなどの様子がいつもと違うことにご家族が気づかれることがあるかもしれませんので、ご家族とも症状を共有しておくことも大切です。また、脳に病変をお持ちのリンパ腫の患者さんや、多発性骨髄腫に対してアベクマ®というCAR-T細胞療法を行われる患者さんは、ICANSのリスクが高いと報告されています。このような場合は、書字確認(好きな単語や文章を一つ決めておき、毎朝同じ内容を書く)を日々行うことが有効です。急に書字が難しくなった場合、ICANSの早期発見が可能なことがあります。

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