一般社団法人日本造血・免疫細胞療法学会 Japanese Society for Transplantation and Cellular Therapy

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12-6. 栄養・食事について

最終更新日:2018年5月17日

治療の準備

抗がん剤による治療では、吐気や食欲不振が起こることが多くあります。治療を継続するための体力を保持していくために、摂取カロリーを維持すること、特に食事は必要不可欠です。吐気などによる食欲不振時には、食べられそうな食品を選び、口から食べ、腸を使うことを継続することで全身状態の維持にもつながり、さらに、治療を継続するための自信を得ることにもなります。抗がん剤により、食事の量が減った、食事を美味しく食べられないといった症状がある場合には医師、管理栄養士、看護師など医療スタッフに相談してください。

<特に起こる可能性のある症状と食事の対応>

食欲不振

  • 少量ずつ盛り付けた食事
  • のど越しのよい食事
  • 主食を工夫した食事
  • においに配慮した食事

口内炎

  • のど越しのよい食事
  • 刺激の少ない食事(硬くなく、軟らかい食事。塩分、酸味、香辛料などの刺激の少ない食事)

移植と生着まで

移植治療が始まると、白血球の低下や免疫力の低下により腸で感染を起こしたり、治療の影響で腸の粘膜が荒れることがあります。そのため、治療後の一定期間は食事や飲み物を制限し、食事からの感染症を予防します。制限の内容や期間については医師、管理栄養士、看護師に相談してください。病院食は「大量調理施設衛生管理マニュアル」に従った食事が提供されており、移植患者さんも安全に食べることができます。

病院により様々な取り組みが行われていますが、微細水蒸気加熱調理を行える施設であれば、通常の調理に加えて、果物や生野菜は特殊な殺菌調理を行うことで、衛生的でほとんど「生」に近い状態で提供するなど、食べる楽しみにも配慮した食事を提供可能です。

移植後早期の合併症

口内炎や食道炎、下痢などの粘膜障害が起こることがあります。口内炎や食道炎の場合には、刺激を控えた軟らかくよく煮た食事や、ゼリーなど食べやすい食事内容へ変更し、口の中への刺激に配慮する必要があります。下痢の場合には消化しやすい食事内容とします。場合によっては、腸管に刺激となる乳製品を控える場合もあります。

食事の内容は、上述のとおり治療とも密接に関係するため、担当医が決定します。担当医の指示の範囲で管理栄養士が調整しますので、お困りの際には相談してください。治療においては、可能な限り口から食べて、腸を使った栄養管理を行うことは、早期の回復のためにとても重要です。しかしながら、消化管のGVHDで下痢がひどい場合や出血している場合など身体の状態によっては、口から食べることを休む必要がある場合もありますので、担当医の指示に従ってください。

食事の摂取は上記のように可能な限り継続していただくのが良いのですが、やはりどうしても十分な量が摂取できない状況になった場合には、経静脈栄養(いわゆる点滴での栄養)を追加して対応します。経静脈栄養でも糖質、脂質、アミノ酸に加えてビタミンや微量元素も補うことが可能です。静脈での栄養は多すぎると血糖値が上昇したり、肝臓に負担がかかったりという副作用が生じることもありますが、最低限の栄養を投与することは体力を維持することに非常に重要です。血糖値に関しては点滴がなくても移植後上昇することも多いので、血糖が上がってきた場合には必要に応じて定期的に血糖の測定を行って高血糖をインスリンなどでコントロールすることもあります。

退院に向けて

移植後の体重減少は予後にも関係することが明かとなっています。退院に向け、必要な栄養・水分を口から摂れるようにする必要があります。味覚の異常が残っている場合も多いのでなかなか食欲がわかないかもしれませんが、色々な種類の食べ物を試したり、味付けを工夫したりして何とか経口摂取を増やすようにしてください。

経口摂取が不十分な状態だと経静脈栄養が続くことになります。経静脈栄養が原因で食欲がわかないのではと訴える方もいらっしゃいますが、移植後の方の場合経静脈栄養を止めるだけで食欲が回復することはほとんどありません。辛抱強く経口摂取を増やすように努めてください。どうしても食欲がわかない場合には胃のGVHDの可能性が高いですので、胃カメラの検査が勧められます。

退院後の生活

免疫抑制剤を内服している場合、感染と薬剤との飲み合わせに注意して食事を摂ることが必要です。

移植後の食事における注意点

*移植後経過とともに制限が緩和していきます。ご自身にあった食事選択について医療者にご相談ください。

  • 調理前には必ずせっけんで丁寧に手を洗う
  • 調理器具は衛生的に管理されたものを使用する
  • 調理済み食品は、2時間以上常温保管されたものは食べない
  • 賞味期限、消費期限内のものとし、適正に保管された食品を選択する
  • 外食や調理済み食品を選択する際には、調理製造過程と保管状態の安全性が確認できるものを選択する
  • サルモネラ、カンピロバクター、病原性大腸菌、腸炎ビブリオ、ノロウイルス等の食品汚染の可能性があるため、肉類・魚介類・卵の生食は禁止
  • カマンベールやブルーチーズ等かびの生えているチーズは、真菌の摂取や吸入による感染の可能性もあるため避ける
  • 味噌は加熱調理して食べる
  • 豆腐は、殺菌表示のあるもの、または、充填豆腐とする
  • 生の木の実・ドライフルーツは水分を含んでいるため、真菌の発生や食品汚染の可能性があるため避ける
  • 漬物・梅干は調理工程の衛生管理が確認できない場合は避ける
  • 缶・ペットボトル・ブリックパック等に入った飲み物は、包装に破損のない賞味期限内のものを選ぶ。開封後はコップ等にうつして飲み、容器に直接口をつけない。開封後は冷蔵保存し24時間過ぎたら破棄する
  • 水道水は、完全に殺菌されたものではないため1分以上沸騰させてから飲用とする
  • 缶詰・レトルト食品は、容器の破損・形態・膨張していないものを選ぶ
  • アイスクリーム・シャーベット・ゼリー・プリンは、個別密封させているものを選ぶ。一度溶けたものは避ける

晩期障害

体重増加(肥満)や糖尿病、脂質異常症などが起こる場合があります。移植後の方は心血管の合併症(心筋梗塞や脳梗塞など)のリスクが高いとされていますので、特に注意が必要です。移植前にこのような生活習慣病がなくても移植に用いる薬剤の影響で起こってくる可能性がありますので、長期的にフォローしていく必要があります。各々薬剤のみでなく食事指導でのコントロールも重要ですので、管理栄養士に相談してください。

栄養管理もメリハリをつけて行う必要があります。食欲不振のときは食べやすい食品を中心に食べて構いません。しかし、食べられるようになったら、栄養バランスに注意し、自分に見合った食事内容とする必要があります。

1日に必要なエネルギー量の目安

現体重(低体重や過体重を除く)×25~30kcal

低体重とはBMI<18.5、過体重とはBMI>25のことを言います

BMIの求め方
体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

例)身長160cm 50kgの方の場合のBMIは、
50kg÷1.6m÷1.6m=19.5 となります

また、活動量によっても必要な栄養量は異なるため、管理栄養士に相談して下さい。

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