造血細胞移植を受ける場合、身体的な不安はもちろんのこと、それとともに医療費の支払いや生活費等についても不安になる方が多いのではないでしょうか。治療や移植にかかる医療費は高額であり、なおかつ長期にわたった治療が必要となります。高額な医療費を毎月支払っていくことが困難な場合に利用できる医療費の助成制度や、どのような支援体制があるかについてご紹介いたします。
※限度額等は2020年12月現在のものです。
同じ月の間に同じ医療施設の同一診療科で保険適用の自己負担額が一定の金額を超えた場合に、超えた額の払い戻しが受けられる制度です。ただし、食事代や差額ベッド代などは対象になりません。尚、「一定の金額」は被保険者の収入によって異なります。また、外来と入院とは別にして計算され、申請により支給されます。医療費の自己負担限度額につきましては協会けんぽホームページをご参照ください。
協会けんぽホームページ
※トップページ > 健康保険ガイド > 病気やケガをしたとき > 高額な医療費を支払ったとき(高額療養費)参照
70歳未満の方と70歳以上の非課税世帯等の場合、事前に保険証の発行機関(国民健康保険であれば市役所等、政府管掌であれば協会けんぽ等)から「限度額適用認定証」(市民税課税世帯)「限度額適用・標準負担額減額認定証」 (市民税非課税世帯)の交付を受けることによって、病院窓口の支払額が自己負担限度額で良いことになります。ただし、未納保険料がある場合利用できませんので加入する健康保険組合などにお問い合わせください。
※「認定証」を提示しない場合は、従来どおりの手続きとなります。(高額療養費の支給申請をして、支払った窓口負担と限度額の差額が、後日、加入している健康保険組合などから支給されます)
当入院時食事療養費についても非課税世帯の方は保険証の発行機関に申請することで自己負担額が減額になります(一般:460円→非課税:210円)。また、入院が90日を越えて再度申請するとさらに自己負担額が減額になります(90日目まで:210円→91日目から:160円)。更に、70歳以上の方のうち、所得によって100円に減額される方もいます。
骨髄液やさい帯血の運搬費用は健康保険の療養費払いの対象となります。特に遠方(海外を含む)の採取施設から骨髄やさい帯血が搬送される場合、費用が10万円を超えることもあります。請求方法は、病院へ支払った費用の領収証を添付し、医師の意見書、療養費払いの申請書、搬送経路、明細書等を保険者へ提出します。後日3割から10割程度指定した口座へ返金を受けることができます(返金額は保険者によって差があります)。
療養のために働けず、給料がもらえない時にその間の生活費を保障するためのもので、健康保険に加入している患者さんは利用する場合が多いです(国民健康保険加入者は利用できない)。連続して休み始めて4日目(船員保険では1日目)から支給され、会社から給与の支払いを受けられないか少額となる場合、加入している健康保険から、休んだ日1日あたり標準報酬月額の1/30(標準報酬日額)の2/3に相当する額を限度に傷病手当金として支給されます。助成対象の期間は支給開始から最長1年半までです。
「10-3.退院後の生活に利用できる支援 所得税の医療費控除制度」のページをご参照ください。
すぐに医療費を用意できない場合(低所得世帯、高齢者世帯、身体障害者が対象)に居住地の社会福祉協議会へ申請すると、療養に対する資金の貸付制度が利用できます。
HLA検査料は、検査を実施する段階では保険適応外のため自費請求となり、料金も病院によって差があります(0円~10万円くらいまで)。経済的事由でHLA検査を受けることが困難な患者さんのために、検査費用を援助する基金もあります(淳彦基金)。
2001年1月9日他界された勝木淳彦さんが生前抱いていた夢「一人でも多くの患者さんが、一番合ったドナーさんから、一番良い時期に、骨髄移植を受けられるようになって欲しい」を実現するために創設された基金です。生活保護受給者、母子家庭の方など経済的事情のある方が対象で、HLA検査費用の援助が受けられます。ただし「HLA研究所」での検査費用に限られます。
1995年5月に他界された佐藤きち子さんが「お金がなくて骨髄移植が受けられない患者さんのために使ってください」との遺言とともに寄付された寄付金を元に運営さています。助成内容は医療費の一部、日本骨髄バンクに支払う患者負担金などです。給付の限度額は30万円で造血細胞移植を望みながら経済的事由によって実施が困難な患者さん・ご家族が対象です。助成対象の期間は移植を挟んだ3ヶ月間です。
特定非営利活動法人 全国骨髄バンク推進連絡協議会
※トップページ > 患者・ドナーサポート > 佐藤きち子記念「造血細胞移植患者支援基金」(旧:佐藤きち子患者支援基金)参照
「志村大輔基金」は、当時まだ新しい治療法といわれたグリベック服用で慢性骨髄性白血病と闘いながらも、2012年1月還らぬ人となった志村大輔さんの遺志を受け継ぎ、生涯にわたる分子標的薬治療のために高額な療養費の負担を強いられる患者さんへの支援と、若くして発病した男性患者さんの、いつの日か子供を授かる希望を精子保存というカタチで未来につなぐことを願って、故人の友人、ご家族、全国協議会が一体となって運営する基金です。分子標的薬の治療費支払いに対する助成、精子保存にかかる採取・保存にかかる費用の助成を、一定の基準を設けた上で給付されます(20,000円~300,000円)。
特定非営利活動法人 全国骨髄バンク推進連絡協議会
※トップページ > 患者・ドナーサポート > 志村大輔基金 参照
若い女性の場合、治療の過程で生殖機能にダメージを受け不妊となる可能性もあり、がん患者のための未受精卵子保存などの研究が進められ、今や造血幹細胞移植を始める前に卵子を保存し、完治した将来に子どもをもつことも夢ではなくなっています。「こうのとりマリーン基金」は、そんな未来への希望をつなぐために、未受精卵子の保存、受精、着床を経済的に支援するものであります。本基金は「給付」制度となるので、これを受けた方に対して返済を求めることはありません。
助成対象(下記HP参照)となる方は、一人上限10万円まで給付が受けられます。
特定非営利活動法人 全国骨髄バンク推進連絡協議会「 こうのとりマリーン基金」
治療中の患者さんへかつらの無償貸与を行うと同時に、利用後のかつらに滅菌・消毒・クリーニング・修繕を施し、再度かつらを無償貸与する活動をしています。
※ 夏目雅子ひまわり基金 連絡先TEL:03-3354-7261
「10-3. 退院後の生活に利用できる支援 障害年金」のページをご参照ください。
「10-3. 退院後の生活に利用できる支援 身体障害者手帳」のページをご参照ください。
「10-3. 退院後の生活に利用できる支援 育成医療・自立支援医療(更生医療)」のページをご参照ください。
「指定難病」は、難病のうち以下のような要件を満たす方について厚生科学審議会(指定難病検討委員会)が審議を行い、厚生労働大臣が指定するものです。
「医療費公費負担」は患者さんの生計を主に維持する生計中心者の所得税額(市民税額)に応じて医療費の自己負担限度額が決定されます(0円~30,000円)。ただし、認定された疾患名にかかる医療費のみ対象であり、自己負担は保険請求額の2割負担(又は1割)となり、1年ごとの更新手続きが必要です。入院時の食事療養費は一食260円の自己負担となります。
国が生活に困っている国民に対し、困っている状況や程度に応じて必要な保護を行い最低限度の生活を保障する制度です。
《申請条件》
《申請方法》
※保護費の支給額は厚生労働省の定める基準で計算される最低生活費と収入を比較して、最低生活費から収入を差し引いた額が保護費として支給されます。年齢や世帯の構成人数などによって保護費は異なります。
*以下、小児の方が利用できる制度を紹介します。
「小児慢性特定疾患」とは以下の要件の全てを満たす方のうちから、厚生労働大臣が定めるものをいいます。
《対象年齢》
18歳未満の児童です。( ただし、18歳到達後も引き続き治療が必要と認められる場合には、20歳未満の方を含みます。
「医療費公費負担」は患者さんの生計を主に維持する生計中心者の所得税額(市民税額)に応じて医療費の自己負担限度額が決定されます(0円~15,000円)。
20歳未満の精神又は身体に障がいのある児童を監護する父母などに、特別児童扶養手当が支給される。
18歳未満で小児がんを発症し、申請時20歳未満の抗腫瘍治療中の患児の家族(一疾病で一回限りの援助)を対象に、必要とされる医療を等しく受けられること及び療養に伴う経費負担の軽減を願い、善意の寄付を財源に援助事業をおこなっています。援助金額は原則、療養援助委員会の審査会(年5回開催)で援助内容・金額が決定されます(所得制限あり)。
また、公益財団法人がんの子どもを守る会(CCAJ)では小児がんの総合サポート事業をおこなっており、様々な支援活動を実施しています。
アフラックがん遺児奨学基金は、小児がんを経験した子どもや、がんにより家族の主たる生計維持者を亡くし、経済的な理由から充実した学校生活の維持が困難な高校生のための奨学金制度であり、返還の必要はありません。
" Japan Hair Donation & Charity"は賛同する美容室で寄付された『髪の毛』を使って医療用ウィッグを作成し、18歳未満の子ども達に無償で寄贈をおこなっているNPO法人です。
全国で約250店。病室へ出張も可能です。
※特定非営利活動法人Japan Hair Donation & Charity ホームページ
“小さな翼のはばたき”を応援したいとの願いから名付けられた「リトルウィング・ワークス(LWW)」は、アートネイチャーの企業理念に基づく社会貢献活動のひとつです。さまざまな原因によって髪に悩みをもつ4歳~15歳までの子供たちにウィッグを無償で提供しています。1998年の活動開始以来、これまでに約5,200人の子供たちにウィッグをプレゼントしています。
リトルウィング・ワークス事務局 0120-756-283(受付時間:10:00~18:00)
長期療養が必要な患者さんにとって、遠方からくる家族の宿泊費も負担が大きくなります。そこでファミリーハウスやウィークリーマンションについてホームページで検索したり、病院の相談員に相談してみましょう。
ホスピタル・ホスピタリティ・ハウスは、高度医療を受けるために、自宅を離れて病院に来ている子どもとその家族のための滞在施設です。病院近くのファミリーハウスについてホームページも検索できます。
※JHHHネットワーク(日本ホスピタル・ホスピタリティ・ハウス・ネットワーク ホームページ
小児がん治療にかかる諸経費のうち交通費・宿泊費の支援を目的として、2014年4月に認定NPO法人ゴールドリボン・ネットワークから「小児がん交通費等補助金制度」が開設されました(2020年6月改定)。
審査により助成金額が決定されます。また、年間予定額に達した時点で、本年度の小児がん交通費等補助金制度につきましては終了となります。
《対象事項》
《対象者》
《対象期間》申請日より遡って6ヵ月間
《補助金額》
申請内容に基づき、世帯所得と移動距離を勘案し上限50~10万円(年間)
※年間とは、交通費もしくは宿泊日が発生した日を開始日として1年間
《適用時期》
2020年6月支払い分より
必要書類、申請方法等につきましては、下記HPをご参照ください。
※ゴールドリボン・ネットワーク ホームページ
参考資料:
「保健医療サービス 保健医療制度・医療福祉」㈱弘文堂
厚生労働省ホームページ
協会けんぽホームページ
改訂版「白血病と言われたら」闘病支援編 (全国骨髄バンク推進連絡協議会)
佐藤きち子記念『造血細胞移植患者支援基金』ホームページ
淳彦基金を育てる会ホームページ
志村大輔基金ホームページ
こうのとりマリーン基金ホームページ
がんの子どもを守る会ホームページ
全国骨髄バンク推進連絡協議会ホームページ
日本年金機構ホームページ
ファミリーハウスホームページ
ヘアドネーション活動(JHDAC)ホームページ
アートネイチャーホームページ
アフラックホームページ
ゴールドリボン・ネットワークのホームページ