移植の適応である疾患と診断されたすべての患者さんが、造血幹細胞移植を受けられるわけではありません。造血幹細胞移植という治療法は、通常のがん化学療法や放射線療法に比べて患者さんにかかる身体的な負担が大きく、さまざまな造血幹細胞移植に関連した合併症(移植関連合併症)が高率に発症します。また精神的な負担も通常の治療に比して大きいものがあります。さらに移植後の晩期合併症も無視できません。したがって、造血幹細胞移植を実施するに当たっては患者さんの体がこれらの合併症に耐えられるかどうかを、あらかじめ評価し、高齢の患者さんや移植前の全身状態が悪化している患者さんでは、移植治療に関連した合併症によって重篤な状態になる可能性が高いと考えられるため、造血幹細胞移植を行わないこともあります。またその他の要因で移植には適さないと判断し移植を断念する場合もあります。
年齢に関しては、一般的には、造血幹細胞移植を受けることができるのは、65歳位までといわれています。65歳以上の患者さんに対しても造血幹細胞移植は実施されることはありますが、患者さんの年齢が高くなるにつれて、移植関連合併症の発生率も高くなると考えられており、移植前処置などに特別な工夫 (移植前処置の種類について)が必要になります。また、移植前に患者さんの循環器系、呼吸器系、消化器系、肝機能、腎機能等について検査を行い、移植に耐えうるか全身状態の評価を行います。
詳しくは「6.移植の実際-治療の準備-」をご覧ください。