移植後長期フォローアップ外来運営を支援する
“LTFUツール全国版”のご紹介
造血幹細胞移植推進拠点病院
国立がん研究センター研究開発費福田班
このたび、造血幹細胞移植医療体制整備事業の一環として、移植後長期フォローアップ外来運営を支援する“LTFUツール全国版”の運用を開始することをご報告申し上げます。
LTFUツール全国版の構築は、今まで国立がん研究センター研究開発費福田班プロジェクトとして着手し、2018年に多くのご施設の先生方にご協力いただきましたLTFUに関する全国調査の結果(Biol Blood Marrow Transplant. 2020 May;26(5):949-955)等を基盤として進めてまいりました。
背景
移植成績の改善とともに、長期・晩期に移植経験者の身体的・精神的・社会的な予後やQOL改善を目指す必要性、重要性が高まり、移植後長期フォローアップ(LTFU)外来における診療はその役割を担っております。しかし、限られたLTFU外来の診療時間の中でスクリーニングを行うべき問題は身体的合併症に限っても多臓器多分野にわたるほか、心理面、経済面、就労・就学、妊孕性、家族生活などの心理社会面を含め、多岐にわたります。
移植後晩期のスクリーニングに関する国際ガイドライン(Rizzo. 2006年、Majhail. 2012年)や2017年に発刊された本邦のLTFUガイドライン(日本造血細胞移植学会ガイドライン第4巻)などの参考著書があるものの、ガイドラインが存在するだけでは、医療従事者や患者の行動変容を起こすには十分ではなく(Bishop MM. Biology of blood and marrow transplantation. 2010;16(2):207-14)、実際に個々の対象者に有効な情報提供が行われる必要があるということも示されています。
福田班で行った全国調査の結果から、これまでも各ご施設のLTFU外来において、問診票や患者手帳などの独自のツールを用いて効率的な診療をするための工夫が行われてきたことが示されました。一方で、ツールを使われていないご施設やまだ整備されていないツールの種類も多く、同調査では各種のLTFUツールに対して高いニーズが示され、さらに「ガイドラインをより実用的なフォーマットにしたツールがほしい」「統一した診療が行われるようにそのようなツールが共有されるとよい」といった要望も明らかとなりました。
造血幹細胞移植医療体制整備事業は、造血幹細胞移植を受けた患者さんが、どの地域に居住していても、質の保たれた生活を送り、長期のフォローアップを受けることができる医療提供体制を構築することを目的としております。LTFUツール全国版の構築とその運用開始がその目的を推進する一助になることを期待し、引き続き検討を重ねてまいります。
LTFUツールについて
LTFUツールにはLTFU外来における診療をサポートする様々なものが考えられますが、その役割・有用性として「スクリーニングすべき項目を漏らさず拾う」「スクリーニングや記録に要する時間の節約」「多職種間の速やかな情報共有」「均一な情報提供」「効率的・有効な情報提供」などが提案されてきました。
LTFUツールに関する詳細な説明については、下記をご参照ください。
ツールの種類・リリース状況
患者指導用リーフレット(第一版)
- LTFU外来における晩期の合併症や問題に関する情報提供を目的とした説明資料
- 該当する合併症や問題がある症例に対して、1テーマ=1枚のリーフレットの形式で手元に残る資料として情報提供をする
- 「均一な情報提供」「効率的・有効な情報提供」といった有効性が期待されます
- 改変をご希望の場合、パワーポイントファイルをお送りしますので、下記の各ブロック問い合わせ・連絡先までご連絡ください
- 食中毒への対策
- 免疫抑制剤終了後の注意点
- 予防接種
- インフルエンザ流行期の対策
- 帯状疱疹について
- ステロイド内服中の注意点
- 移植後の口腔ケアについて
- 眼のGVHDについて
- 移植後の皮膚ケアについて
- 移植後の爪ケアについて
- 移植後の肺障害について
- 味覚障害について
- 移植後の足のつり
- 筋力トレーニング
- ストレッチ
- 二次がんについて
- 移植後のメタボリックシンドローム
問診票フォーマット(第一版)
- LTFU外来における患者さんの体調や晩期合併症の状況を把握する目的の問診票
- コンセンサスメソッドのデルファイ法による研究を経て項目を抽出しております
- 「均一、速やかな情報収集」「多職種間の情報共有」といった有効性が期待されます
- 用途にあわせた3種類の問診票フォーマットを掲載しております
- ご施設のLTFUにおける問診票の使い方や役割に合わせて一部改変していただくなどの形で、柔軟にご活用いただけましたら幸いです
- それぞれの概要、活用方法等については“LTFU問診票_概要説明(PDF)”をご参照ください
- 改変をご希望の場合、また3種類の問診票の項目を詳細に確認・比較したい場合には、問診票のワードファイルと、項目リストのエクセルファイルをお送りしますので、下記の各ブロック問い合わせ・連絡先までご連絡ください
患者指導用リーフレット小児版(第一版)
- 2021年6月に公開された患者指導用リーフレット全国版をもとに、小児移植患者に適した内容に修正を行ったバージョンです
- 中高生~保護者向けの文面・表現となっております
- 17のテーマが一つのファイルになっておりますが、各ご施設の運用にあわせてご活用ください
- 改変をご希望の場合、下記の小児版ツール問い合わせ・連絡先までご連絡ください
移植後就労支援リーフレット(第一版)
- 移植後の就労支援は重要な課題ですが、移植前から大事なメッセージがあると考えられますので、LTFUツールの範疇を少し超えるものではありますが、①診断時、②移植前、③移植後(LTFU)の3時点の情報提供を目的としたリーフレットを作成しました
- ④補助資料には、国内の実態調査の報告(福田班2021年)から、退職や復職に関するデータのほか、就労支援に関して医療者にできることがまとめられています
(①②③説明時の補助資料として、また移植後の就労に関する詳細な実態を知りたい患者さん向けの資料としてお使いください)
- 改変をご希望の場合、下記の問い合わせ・連絡先までご連絡ください
成人移植患者LTFUスクリーニング項目リスト
- LTFU学会ガイドライン(日本造血細胞移植学会ガイドライン第4巻)で推奨される移植後のスクリーニング項目を時期別に示したリストです
- フォローアップ担当者がこのツールを参照し、スクリーニング計画の一助としていただくことが目的です
- 学会ガイドライン自体の方針もそうであるとおり、あくまで推奨項目であり、強制されるものではないこと、法的効力を持つものではないこと、医療者が参考にする資料にとどまることにご留意ください
LTFUツール全国版の使用について
ファイルのダウンロード
当ホームページでは、下記の担当メンバーにより構築されたLTFUツール全国版(PDF)を移植担当施設の医療従事者の皆様に自由にダウンロードいただけるようになっております。
各ご施設で印刷の上、LTFU診療にご活用ください。
(患者さんやご家族の方は、ご使用の前に移植後通院中の医師・看護師に必ずご確認ください。)
ツールの改変手続き
LTFUツール全国版の内容は、多施設の担当メンバーにより、汎用性を持たせるよう検討を行っておりますが、ご施設の診療方針や地域の状況などによっては改変の必要がある場合もあるかと存じます。
その場合には、下記の各ブロック造血幹細胞移植推進拠点病院の担当問い合わせ先までご連絡ください。改変可能なフォーマットの提供をいたします。
改変済みツールの使用
改変版をご使用いただく場合には、全国版(第一版)オリジナルから改変されているということを必ず明記いただく必要がございます。
“全国版”と記載のある部分を、“全国版_(施設名)改変版”としていただき、「全国版がもとになっていること」と、「改変されていること」を明記されたものをご使用ください。
また、改版の理由や改変内容について今後の参考とさせていただきますため、各ブロック担当問い合わせ先までお知らせいただきます。
実際の診療における使用上の責任
ツール全国版の方針として、全国の移植担当施設からのニーズにこたえ、“LTFU担当医療従事者の診療を支援するツールの一例”として公開しております。
ツール全国版の使用を強制するものではないことはもちろん、当ツールの臨床現場における使用上の責任は各ご施設におかれることをご理解ください。
問い合わせ・連絡先(ツール改版、ツールの使用方法等)
※各ブロック造血幹細胞移植推進拠点病院の担当問い合わせ先までご連絡ください。
※日本造血・免疫細胞療法学会(JSTCT)事務局では対応いたしません。
※メールアドレスにつきましては★を@に変更してご連絡ください。
<北海道ブロック>
北海道大学病院
担当部署:血液内科
担当者 :山田 千津子
担当医師:後藤 秀樹
電話番号:011-706-5823(造血幹細胞移植連携支援センター)
メールアドレス:info★hokudai-hct.org
<東北ブロック>
<関東甲信越ブロック>
国立がん研究センター中央病院
担当部署:造血幹細胞移植地域連携支援窓口
電話番号:070-6956-2863
メールアドレス:skch-jimu★ml.res.ncc.go.jp
国家公務員共済組合連合会 虎の門病院
担当部署:造血幹細胞移植地域連携支援センター事務局
電話番号:03-3588-1111(代)内線:3180
メールアドレス:tora-kyoten★toranomon.gr.jp
東京都立駒込病院
担当部署:駒込病院造血事務局
電話番号:03-3823-2101 内線2069
メールアドレス:zouketsu★cick.jp
<北陸ブロック>
金沢大学附属病院
担当部署:医療支援課 拠点病院事務
電話番号:076-265-2033
メールアドレス:hpkyotenjim★adm.kanazawa-u.ac.jp
<東海ブロック>
名古屋第一赤十字病院
担当部署:血液内科
担当者 :大引真理恵
電話番号:052-481-5111
メールアドレス:ketsunai★nagoya-1st.jrc.or.jp
<近畿ブロック>
大阪市立大学医学部附属病院
担当部署:地域連携支援センター
担当者 :日野 雅之
電話番号:06-6645-3881
メールアドレス:isyokukyoten_ocu★med.osaka-cu.ac.jp
<中国・四国ブロック>
岡山大学病院
担当部署:造血幹細胞移植医療体制整備事業事務局
担当者 :【HCTC】葛原 文美
【医師】鴨井 千尋
電話番号:086-235-7767
メールアドレス:zouketsukyoten★okayama-u.ac.jp
愛媛県立中央病院
担当部署:移植患者支援センター
担当者 :【HCTC】中矢 由紀
【医師】名和 由一郎
電話番号:089-947-1111
メールアドレス:c-nakaya★eph.pref.ehime.jp
<九州ブロック>
九州大学病院
担当部署:造血幹細胞移植地域支援センター
担当者 :【事務局】zouketsu★med.kyushu-u.ac.jp
【医師】森 康雄( yasuomr★gmail.com )
電話番号:092-642-5230(5315)
<沖縄ブロック>
琉球大学病院
担当部署:第二内科
担当者 :平良 真紀子
電話番号:098-895-1146
メールアドレス:ryudai-kyoten3331★hct-ryukyu.com
<小児版ツール問い合わせ・連絡先>
日本小児血液・がん学会 造血幹細胞移植委員会
委員長:日野 もえ子(千葉大学病院)
実務担当:加藤 格(京都大学病院)
メールアドレス:jspho★asas-mail.jp
LTFUツール全国版検討チーム
福田 隆浩 国立がん研究センター中央病院
黒澤 彩子 伊那中央病院
森 文子 国立がん研究センター中央病院
山花 令子 東京医療保健大学
塚越 真由美 国際医療福祉大学病院
森 有紀 虎の門病院
大和田 千桂子 国際医療福祉大学成田病院
稲本 賢弘 国立がん研究センター中央病院
後藤 秀樹 北海道大学病院
大西 康 東北大学病院
日野 雅之 大阪市立大学医学部附属病院
藤井 伸治 岡山大学病院
名和 由一郎 愛媛県立中央病院
森 康雄 九州大学病院
土岐 典子 都立駒込病院
小澤 幸泰 名古屋第一赤十字病院
井美 達也 金沢大学附属病院
森島 聡子 琉球大学病院
患者指導用リーフレット検討メンバー
奥田 生久恵 国立がん研究センター中央病院
神田 舞 国立がん研究センター中央病院
吉田 千香 国立がん研究センター中央病院
池田 昌子 国立がん研究センター中央病院
村上 順子 国立がん研究センター中央病院
田畑 円 国立がん研究センター中央病院
石川 絢子 国立がん研究センター中央病院
松浦 朋子 国立がん研究センター中央病院
成田 円 虎の門病院
橋本 伊利奈 虎の門病院
村田 恵理子 虎の門病院
小児版リーフレット検討メンバー
神奈川県立こども医療センター
栁町 昌克
横須賀 とも子
田附 麻希
脇 由香
京都大学病院小児科
加藤 格
川勝 和子
日本小児血液・がん学会 造血幹細胞移植委員会
日野 もえ子 千葉大学病院
平山 雅浩 三重大学病院
加藤 格 京都大学病院
福島 啓太郎 獨協医科大学病院
井口 晶裕 国立成育医療センター
安井 昌博 北九州市立八幡病院
成田 敦 名古屋大学病院
山本 将平 東海大学病院
矢部 普正 東海大学病院
橋井 佳子 大阪国際がんセンター
佐藤 篤 宮城県立こども病院
移植後就労支援リーフレット検討メンバー
移植後就労支援リーフレット 検討メンバー
高橋 都 NPO法人日本がんサバイバーシップネットワーク
加耒 佐和子 国立がん研究センター中央病院
清水 理恵子 国立がん研究センター中央病院
桜井 なおみ 一般社団法人CSRプロジェクト
岸田 徹 NPO法人がんノート
移植後就労支援リーフレット デザイン
在家 智 graphique