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骨髄採取後、骨孔の閉鎖不全を伴う腰痛の遷延

最終更新日:2024年5月27日

このたび報告されたドナー有害事象について、以下に症例情報とドナー委員会の総括を提示します。移植医各位におかれましては、この事例を参考にしていただき、安全な造血幹細胞採取を心がけていただくようお願い申し上げます。

症例情報

  • 報告年:2023年〜2024年
  • 事象名:骨髄採取後、骨孔の閉鎖不全を伴う腰痛の遷延
  • ドナー年齢:20歳台
  • 性別:男性
  • 採取幹細胞種類:骨髄
  • 発現日:採取終了日の約1か月後
  • 転帰:軽快

総括:

腸骨部位の皮膚に左右それぞれ1箇所(腸骨としては複数箇所)、13G針で穿刺して約800mLの骨髄液を採取し、特に手技的な逸脱はなかった。採取術後は問題なく経過し、3週後の検診時には症状を認めなかったが、1か月を過ぎてから、作業時に左側穿刺部位付近の疼痛が出現した。術後53日目に外来受診、対症療法を行ったが軽快には至らなかった。術後81日目に整形外科紹介、専門医の診察において、穿刺部の圧迫と前屈により脊柱起立筋への緊張が生じた際に同部位に疼痛が生じること、CT上両側上後腸骨棘に穿刺針による骨孔が残存することが確認された。

整形外科領域では、数ヶ月を要する創部の軟部組織のリモデリング過程で、局所の炎症に伴う創部の緊張感や疼痛が残存する場合が知られている。今回は、リモデリング過程を示唆する骨髄採取後骨孔の残存は両側に認められ、疼痛は特に左側にみられた。

骨髄採取後の腰痛は良く知られているが、本例は創部のリモデリングに時間がかかり、炎症が遷延することも要因となり得ること、術後時間が経過した後にも注意が必要であることを示唆するものである。

なお、同様の事例は、過去にも稀に認められている。海外からは、骨髄採取後MRIを後方視的に検討した結果、疼痛が遷延する例で骨に病的な所見を伴ったことが報告されている(Bone Marrow Transplantation. 2005;35:667–673)。

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