B型肝炎ウイルス(HBV)はHBs抗体獲得後も肝臓に終生潜伏感染しているウイルスであり、HBs抗原陰性の既往感染例においても、CD20抗体であるリツキシマブ投与や同種造血細胞移植後に10%から最大40%の頻度で再活性化をきたし、一部の方は劇症化し、死亡する場合も報告されている。肝炎に先行する、血中HBV DNAの上昇を検出(HBV DNAモニタリング)し、HBV再活性化を早期診断・早期治療することで再活性化による肝障害対策は確立されつつある。しかしながら、HBV DNAモニタリングでは、HBV再活性化そのものを低下させることはできず、同種移植後のHBワクチン接種によるHBV再活性化予防法の確立を目指すための臨床研究を計画した。
同種移植後HBワクチンにてHBV再活性化を予防できることが示唆されているが、ワクチン投与の至適タイミングや前向き試験での予防効果は明らかにされていない。本臨床研究では、HBワクチンによる移植後HBV再活性化の予防効果、ワクチン成功を規定する因子を明らかにする。
同種造血細胞移植予定のHBs抗原陰性かつHBc抗体陽性のHBV既往感染例(20歳以上70歳以下)
多施設共同ランダム化比較試験。
一次登録症例についてHBV DNA、HBs抗体価を28日毎にモニタリングし、HBV DNAが陽性となった場合は核酸アナログによる先制攻撃治療を行う。移植後140±14日時点で、HBワクチン接種群と非接種群にランダムに割付(二次登録)し、HBワクチン接種(移植後196, 224, 364±14日)、移植後392±14日の採血でHBs抗体<10 mIU/mLの場合は追加ワクチン接種(移植後420, 448, 588±14日)を行い、移植後HBV再活性化の予防効果を検証する。
一次登録:150例
二次登録:片群45例、両群90例
登録期間: 2018年9月から2022年3月31日まで
総試験実施期間: 2018年9月から2024年3月31日まで
国立国際医療研究センター研究所ゲノム医科学プロジェクト
溝上雅史
小野澤真弘
北海道大学病院 血液内科
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楠本茂
名古屋市立大学病院 血液・腫瘍内科
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日本造血細胞移植データセンター臨床試験部(JDCHCT)