造血細胞移植患者さんの診察をしていただき、ありがとうございます。
移植患者さんは、免疫の状態や使用する薬剤の種類など、やや特殊な医療と思われることも多いと思いますが、以下にお示しする点に注意をしていただければ、かかりつけ医の先生に初期対応をお願いできると考えています。主に気を付けるところは、感染症への対応、予防接種、検診の推奨、特有の晩期合併症への注意です。以下に具体的に気を付ける点を説明します。
感染症の低リスクの場合、概ね通常の患者さんの診療と同じように対応していただければと思います。免疫抑制剤の使用中の感染については、敗血症や肺炎など、より重篤な感染症の可能性もあので、判断に迷われる際には、移植施設までご連絡下さい(患者手帳の10~11ページに、移植施設の連絡先が明記してあります)。
ワクチン接種により移植患者さんの感染症を防ぎます。移植後予防接種開始時期とワクチンの種類は、当ホームページの「ワクチン接種」の項目をご参照下さい。また、患者手帳の38~40ページにも、ワクチン接種についての説明があります。
造血細胞移植後には、二次がんとしての悪性腫瘍の発症(造血器腫瘍あるいは固形腫瘍)の可能性があることと、心血管合併症(心筋梗塞や脳梗塞)の可能性もあります。そのため、一般的には造血細胞移植患者さんには、年に1回程度のがん検診、生活習慣病検診が勧められています。
身体的疾患のみならず、成長障害や不妊、社会復帰の遅れ、またそれに伴う抑うつなど、移植後は身体的・精神的な問題が長期間みられるとされています。そういった身体的・精神的な問題への検診や支援生涯必要と考えられます。
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2015年には日本全国で5609件の造血細胞移植が行われており、1日平均で15件以上の造血細胞移植が行われています。つまり、造血細胞移植は特殊な医療ではなく、日常的な医療に近づきつつあります。そのため、移植施設のみで患者さんのフォローアップをしていくのは困難となってきており、かかりつけ医の先生にも、日常診療をお願いする事が今後ますます多くなると思います。移植後の患者さんの事で、対応に困った際には、患者さんがお持ちの患者手帳に記載されている移植施設にまずご相談下さい。