新型コロナウイルス感染症予防のための中和抗体薬「チキサゲビマブ/シルガビマブ(エバシェルド筋注セット)」の血液腫瘍患者への投与について
2022年9月12日
日本造血・免疫細胞療法学会 理事長 豊嶋崇徳
2022年8月30日、アストラゼネカ社製の新型コロナウイルス感染症の発症抑制(予防)を適応とする中和抗体薬「チキサゲビマブ/シルガビマブ(エバシェルド筋注セット)」が特例承認され、国から無償配布されます。
本剤の発症抑制(予防)の臨床試験では、症候性COVID-19の発症リスクを約77%減少させ、その効果は投与後6か月間持続しましたa)。投与対象は、成人及び12歳以上かつ体重40kg以上の小児で、「免疫機能低下等によりSARS-CoV-2による感染症に対するワクチン接種で十分な免疫応答が得られない可能性がある者」であり、日本感染症学会の「COVID-19に対する薬物治療の考え方 第14.1版」b)を踏まえ、厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部 事務連絡(2022年9月7日)c)に以下のとおり示されています。これらの対象者のほとんどは血液悪性腫瘍又は血液内科の患者です。
適応患者一覧(厚生労働省)
具体例として日本造血・免疫細胞療法学会では、日本血液学会と共同で以下のガイダンスを作成しました。あくまで目安ですので、個々の例に応じてご判断下さい。
①B細胞枯渇療法(リツキシマブ等)を受けてから1年以内の患者:
1)治療導入時は入院から外来に移行するタイミング。
2)治療中又は治療終了後(1年以内)。
②同種造血細胞移植の患者:
1)移植前処置開始前(適応患者一覧の1)に該当)。
2)移植後、生着を確認後、安定期に入った後から退院までのタイミング。
3)移植後のフォロー中で、免疫抑制剤を服用している患者。
③CAR-T(キメラ抗原受容体T)細胞療法の患者:
1)白血球アフェレーシス以降(適応患者一覧の1)に該当)。
2)CAR-T投与後、安定期に入った後から退院までのタイミング。
3)投与後フォロー中で、B細胞減少が遷延する患者。
本剤の配分を希望する医療機関は、まずは都道府県を通じて登録センターに医療機関登録を行います。その後、対象となる患者への投与分を都度発注します。詳細は事務連絡をご確認ください。
参考
a)Levin MJ et al. Intramuscular AZD7442 (Tixagevimab-Cilgavimab) for Prevention of
Covid-19. N Engl J Med. 2022 Jun 9;386(23):2188-2200.
URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35443106/
b)日本感染症学会.COVID-19に対する薬物治療の考え方 第14.1版
URL:https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_drug_220907.pdf
c)事務連絡(2022年9月7日):新型コロナウイルス感染症における中和抗体薬
「チキサゲビマブ及びシルガビマブ」の医療機関への配分について
(別紙及び疑義応答集の修正)
URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000986789.pdf